ReFreedom_Aichi:ステートメント

私たちは、あいちトリエンナーレ2019に世界各地から参加するアーティストたちです。私たちはここに、展示中止や一時的なボイコットなどによって現在閉鎖されている、全てのトリエンナーレ出品作家の展示再開を目指すプロジェクト「ReFreedom_Aichi」を立ち上げます。

 

私たちはこのプロジェクトを通して、すべての人々が保障されるべき「表現の自由」や「言論の自由」、ひいては「生き方を他人に強制されない自由」を社会に訴えます。そして、現在多くの展示を観ることが出来なくなっている観客との協働によって、観客の「観る権利」と「知る権利」を取り戻します。

 

あいちトリエンナーレ2019が直面している状況は憂慮すべきものです。オープニングからわずか3日後にひとつのセクションである「表現の不自由展・その後」が閉鎖され、その再開を求めて12組のアーティストが、展示の変更および中止を決めました。現在、会場では多くの作品が鑑賞不可となっており、その様子はこの騒動の異様さと、緊急性を顕にしています。

 

この状況に対し、二組のアーティストが公金に頼らない対話や展示の場として、円頓寺近辺に二箇所のアーティスト・ラン・スペースを立ち上げました。また一部のアーティストらが中心となり、「ジェンダー平等」を掲げた本芸術祭において、女性の人権問題をテーマにした《平和の少女像》に脅迫が向けられている事態に対し、性差別をはじめとしたあらゆる差別に反対する声明文を出しました。他にもアーティスト・ステイトメントは複数あがり、今後も様々なアーティストから、この事態への返答としてのワークショップ、シンポジウム、展示など、多くのアクションが予定されています。

ReFreedom_Aichiは、これらの各アクションを、改めて、共通したひとつのゴールへと集約するためのプロジェクトです。

 

私たちは ReFreedom_Aichi においてまず、

1) 河村たかし名古屋市長や黒岩祐治神奈川県知事そして菅義偉官房長官ら政治家による国際文化事業の内容に介入を示唆する発言について、また差別の扇動に繋がる公人から発せられる歴史否定ともとれる言動を強く非難します。 

2) 脅迫によって文化事業を閉鎖へと追い込む犯罪的手法に強く抗議し、警備の強化と具体的な対応を愛知県警に求めます。 

3) 現在に至るまで、電話や現場での抗議に対応している職員の心身を案じつつ、脅迫・クレーム対策の具体的な見直しと強化を愛知県に求めます。 

4) そして再開への協議の場を一日でも早く設定することを大村知事に求めます。

 

その上で、ワークショップ、アートプロジェクト、共同アクション、シンポジウム、ロビイングなどの具体的な実践を通じて、市民を巻き込んだひとつの「ムーブメント」を可視化させ、「表現の 不自由展・その後」の展示再開によってはじめて実現される、 表現の自由の完全なる回復をトリエンナーレに生み出すことを目指します。

 

私たちの連帯は、アーティストや観客のみならず、現在不完全な状態に陥ったキュレーションの回復を希求することから、キュレーターやあいちトリエンナーレ実行委員会との協働に及ぶでしょう。また私たちは、あいちトリエンナーレの当事者以外にも、幅広く芸術に関わる人々、表現の自由が保障されるべき市民たち、そしていまもあらゆる不自由にあえぐ世界中の人々に、立場、世代、国境の垣根を越えた共闘を呼びかけます。この一連の運動は、戦後日本の芸術における最大の「表現の自由」をめぐる戦いになるでしょう。

 

私たちの自由を自ら勝ち取るために、私たちは奇跡を起こさなければなりません。ボイコットを表明したキューバ人アーティスト、タニア・ブルゲラは、「これまで数々の検閲を受けてきたし、見てきたが、一度検閲された作品が再び再開された経験は一度もない。」しかし日本の関係者と話すうちに、「今回はそれが可能なのではと感じている」と話しました。韓国人アーティスト、イム・ミヌクは、自らボイコットを発表しながらも、展示室が閉じられ作品が観客の目に触れる機会を失ったその日に、その決断がどれほど困難だったかを語りました。多くのアーティストにとってボイコットは、その決断と相反する感情と向き合わざるを得ない、葛藤の末の選択なのです。それでもボイコットしなければならないと 彼/女らは決断しました。なぜなら現在のキューバの状況や、民主主義国家になる以前の独裁体制下の韓国を肌感覚として知っているからです。日本でも戦前、異なる考えや表現を持つことの自由が奪われ、アーティストだけではなく市民が投獄され、殺され、全ての人々が同じ考えを持つことを強要されました。

 

「表現の自由」は、長い歴史のなかで、そして今も、世界のあらゆる場所で自由が侵されることにより命を落としてきた、すべての人間の戦いの上に成り立っています。そして「表現の自由」に対する責任は、私たち全員で背負っている、過去および未来に対する責任なのです。

私たち全ての個人が、自分で考え、表現し、表明する。この大前提や自由な討論が保障されなければ、私たちは、他人に強要されることのない「自分の人生」や民主主義社会を、いったいどう安心して実現していけると言うのでしょうか?

 

今こそ知恵を絞り、アイデアを共有し、創造力を発揮し、共通の目的のために動きましょう。これはあいちトリエンナーレという一つの芸術祭の存続をはるかに超えた、人類の自由を賭けた大きな挑戦です。

 

全ての展示の再開を実現させ、あいちトリエンナーレを「検閲」のシンボルから「表現の自由」のシンボルに書き換えましょう。


 

ReFreedom_Aichi 賛同アーティスト一同